いつも掲示板にご来訪くださる瀝青さまの初書き込みSSです。
瀝青さまのリクで月花が書きました「
真夏のどきどきエアメール」の祥子さま編です。

 

真夏のどきどきエアメール・祥子さま編


 とは言え、これが祐巳のもとへ着く頃には、自分も日本に戻っているかもしれない。
手紙より先に差出人が帰ってるのは、ちょっと恥かしいし、やっぱり、手紙は会えない相手に気持ちを届けるものだから……
と、そんな思い込みもあって投函するのに一瞬、悩んでしまう。
ここはフランス、パリ空港。
「エアメールより、電話のほうが良かったかしら……」
 艶やかな黒髪を指先に絡めながら、祥子は、待合室のポストの前で呟いていた。
腕時計に目をおとす。
搭乗時間まであまりない。ふと向こうのゲートから両親が自分の名前を呼んでいた。
結局、急かされて絵はがきをポストの口に放り込んだ。
 この夏休み、父親の仕事と避暑を兼ねて欧州からアメリカまで家族旅行。
ほぼ地球一周の大移動。
海外の文化や空気にふれ、見聞を広め、多くを知ることは自分にとっても大きなプラスになることは分かってるけど。
「祐巳、夏カゼとかしてないかしら……ときどき、そそっかしいから」
 気になるのは、どうにも妹のことばかり。頭の中でお腹をだして寝ている祐巳の姿がほわりと浮かぶ。
あんまりよく想像できるものだから自分でも可笑しくて、くすりと笑ってしまう。
 なんだか次のイタリアの空港でも悩んでしまった。
会いたいのに、声が聞きたいのに、でも、絵はがきの狭いスペースにわずかな挨拶を書くだけ。
なんだか姉の自分から電話するのは、会いたいとか寂しいとか書くのは、妹に弱さを見せるようで……。
そんな素直じゃない自分が少しイヤで、でも、それでいいような気もして。そんな私を選んでくれたのだから。
この短い言葉の裏も、きっと感じてくれるはず。
『ごきげんよう、祐巳。私は今モロッコにおります。ここは……』
 次の空港。さらりと短い言葉をしたためた。私の想いはちゃんと伝わるはずだから。

 その頃、日本では。
「ね、祐麒。ノルウェーとフランスって近いっけ?」
「近いってば同じヨーロッパだから近いかもしれないけど…北と西だったかな?」
 ちょっと外した押し問答をしているふたり。

 モロッコの青空をゆく機内。渋い顔で眉間をおさえる祥子の姿。
「今、何か、私の想いが少しも伝わっていないような気が……いえ、気のせいよね。気圧の変化で少しイヤな感じがするだけだわ」
 呟いて自分に言い聞かせる。
 再び、日本。
「フランスとイタリアってあまり離れてないよね…」


 おしまい

 

瀝青さまより
というわけで勝手に書いてしまいました。下手ですし、オチも本編に頼ってますけど(笑)
パロディではなく、オマージュということで。これで感想のかわりにさせてくださいね。

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ありがとうございました。
自分の書いたSSのオマージュ、というのでしょうか、始めてなのでくすぐったいです。
でも、本当に嬉しかったのです。